研修の趣旨は「部落差別をはじめとする諸差別について学習し、その解放に向けた歩みを自らの課題とすべく研修を行う」ということです。
真宗大谷派では『宗憲』(宗派の憲法)に「同朋社会の顕現」を謳っていますが、教団自らが抱えてきた差別体質を自己反省しながら、それを課題とし、差別問題や人権問題に対して真摯に向き合う歩みをすすめてきました。
ひとえに差別問題といっても、部落差別、男女差別をはじめ国籍やいじめの問題など幅広くいきわたった課題であります。
ひいては、戦争、医療、教育についても通づる問題であり、人間の根源的課題の1つでもあります。
今回は講師にロバート・ワトソン氏をお招きし、会場の光西寺(大分市末広町)ホールには約50名の参加者が集まりました。
アメリカのアイダホ州出身のワトソン氏は国際交流員として1989年から「大山町役場」に勤務されましたが、大分県日田市と市町村合併した2004年に退職されました。
その後ワトソン氏は大山町で、「和都村企画」を立ち上げ、同時に精神障害者小規模作業所「工房まんげきょう」を運営されています。
子どもさんの通う高校のPTA会長もされており、現在は全国各地で子育てや人権に関する講演活動、翻訳や通訳の仕事などでご活躍されています。
ロバート氏の生い立ちや外国人として日本で暮らして感じたた事などを通して、人と人とのつながりをどのように大切にすべきかということでお話いただきました。
歌がお好きなワトソン氏が来日して大変気に入った歌が『竹田の子守唄』でした。
しかし、その『竹田の子守唄』が京都の被差別部落の地域の民謡であったことを知って、部落差別問題と向きあうようになったそうです。
部落差別の問題に関しては、「寝た子を起こすな」といわれることがあり、今では殆どなくなったから知らせることが差別を助長させる、というような受け止めをする方がいます。
しかし、仲の良い子どもたち同志の間でも誕生会に呼ばれない子がいたり、就職や結婚ができなかったりという事柄が今でも起きています。
「子どもは寝てないで泣いているんです」とワトソン氏は言われました。
ワトソン氏は日本に住んで20年以上にもなるにも関わらず、今だに外国人としての先入観で接してくる人が多いそうです。
ワトソン氏の奥様は日本人ですが3人の息子さんは奥様の前夫のお子さんです。
息子さんの名は、ワトソン竜太くん、ワトソン祥太くん、ワトソン健太くんというそうですが、もともと日本人の息子さんたちなのに名前にワトソンとあるだけで外国人としての先入観を持たれるそうです。
先入観や慣習というのも人間の固定観念を助長させるものです。
その固定観念で人間を価値付けてしまうかもしれません。
ワトソン氏は面白い話をされました。
日本人は和室に客を通す場合、床の間に近い上座にお客を座らせます。
お客さんに床の間にある素晴らしい掛け軸や、お花、装飾品、床柱などを紹介してくれるが、振り返らないと見ることができません。
「はじめから美しく飾られた床の間と向き合うところに座ってもらった方が親切なんじゃないでしょうか」と思うそうです。
「そういえばそうだなあ」と思った次第ですが、ワトソン氏はその理由を調べておられました。
お客さんにとって床の間側の方に座る方が、床の間側の壁が強いうえ、出入り口が見えるのね、不審な者から狙われる危険から身を守り安心できるからということでした。
日本人は「何となくやっているから」「昔からやっているから」という理由で物事の価値基準をとらえてしまいがちです。
何故そうなっているのか、どういう理由があるのかを知ろうとしない、ということがもしかしたら短絡的な差別心をうんでいるのかもしれません。
今回最も印象に残った話はワトソン氏が知人カンさんのいるバングラディッシュに訪れた話でした。
バングラディッシュは毎年のように水害に悩まされ、世界で最も貧しい国の一つであります。
ワトソンさんが訪れたときは、政治等も比較的安定した時期だったのですが、それでも滞在5日間で5人の政治家が暗殺されたそうです。
バングラディッシュのあまりにもひどい生活水準に大変驚かれたということでした。
カンさん一家はそこまでひどい生活ではなかったそうですが、日本から見ると決していい暮らしとは言えない状態でした。
カンさんの2人の子どもたちが学校から帰ってくると、「お疲れさま」「会いたかったよ」「ありがとう」といって親子で抱き合っていたそうです。
夜は家族で歌って踊って笑って過ごします。
この家族には、「愛してる」「尊敬してる」「感謝している」姿があり、おかげさまの心で生活しているということが伝わってきたそうです。
ワトソン氏は最後に、私たちは今一度人間としての原点を見つめ直し、相手を受け入れ感謝すること、そして次世代を担う子どもたちに「人の為に何をすべきで、何ができるのか」ということを伝えることが必要であるということをおっしゃいました。
あらためて人権問題というのは、単に社会を変えていこうというような社会運動に留まるのではなく、自己を見つめ直すという意味でも避けて通れない大切な課題であることを確かめることができました。
ワトソン氏のお話は終始とてもユーモラスで研修はあっという間の2時間でした。
しかし、ワトソン氏の人柄の素晴らしさと姿勢に共感し、外国人であるが故にいい面も悪い面も含め日本人のあり方をご指摘いただいたということは、非常に貴重なご縁をいただくことができた研修でした。
真宗大谷派では『宗憲』(宗派の憲法)に「同朋社会の顕現」を謳っていますが、教団自らが抱えてきた差別体質を自己反省しながら、それを課題とし、差別問題や人権問題に対して真摯に向き合う歩みをすすめてきました。
ひとえに差別問題といっても、部落差別、男女差別をはじめ国籍やいじめの問題など幅広くいきわたった課題であります。
ひいては、戦争、医療、教育についても通づる問題であり、人間の根源的課題の1つでもあります。
今回は講師にロバート・ワトソン氏をお招きし、会場の光西寺(大分市末広町)ホールには約50名の参加者が集まりました。
アメリカのアイダホ州出身のワトソン氏は国際交流員として1989年から「大山町役場」に勤務されましたが、大分県日田市と市町村合併した2004年に退職されました。
その後ワトソン氏は大山町で、「和都村企画」を立ち上げ、同時に精神障害者小規模作業所「工房まんげきょう」を運営されています。
子どもさんの通う高校のPTA会長もされており、現在は全国各地で子育てや人権に関する講演活動、翻訳や通訳の仕事などでご活躍されています。
ロバート・ワトソン氏 |
歌がお好きなワトソン氏が来日して大変気に入った歌が『竹田の子守唄』でした。
しかし、その『竹田の子守唄』が京都の被差別部落の地域の民謡であったことを知って、部落差別問題と向きあうようになったそうです。
部落差別の問題に関しては、「寝た子を起こすな」といわれることがあり、今では殆どなくなったから知らせることが差別を助長させる、というような受け止めをする方がいます。
しかし、仲の良い子どもたち同志の間でも誕生会に呼ばれない子がいたり、就職や結婚ができなかったりという事柄が今でも起きています。
「子どもは寝てないで泣いているんです」とワトソン氏は言われました。
ワトソン氏は日本に住んで20年以上にもなるにも関わらず、今だに外国人としての先入観で接してくる人が多いそうです。
ワトソン氏の奥様は日本人ですが3人の息子さんは奥様の前夫のお子さんです。
息子さんの名は、ワトソン竜太くん、ワトソン祥太くん、ワトソン健太くんというそうですが、もともと日本人の息子さんたちなのに名前にワトソンとあるだけで外国人としての先入観を持たれるそうです。
先入観や慣習というのも人間の固定観念を助長させるものです。
その固定観念で人間を価値付けてしまうかもしれません。
ワトソン氏は面白い話をされました。
日本人は和室に客を通す場合、床の間に近い上座にお客を座らせます。
お客さんに床の間にある素晴らしい掛け軸や、お花、装飾品、床柱などを紹介してくれるが、振り返らないと見ることができません。
「はじめから美しく飾られた床の間と向き合うところに座ってもらった方が親切なんじゃないでしょうか」と思うそうです。
「そういえばそうだなあ」と思った次第ですが、ワトソン氏はその理由を調べておられました。
お客さんにとって床の間側の方に座る方が、床の間側の壁が強いうえ、出入り口が見えるのね、不審な者から狙われる危険から身を守り安心できるからということでした。
日本人は「何となくやっているから」「昔からやっているから」という理由で物事の価値基準をとらえてしまいがちです。
何故そうなっているのか、どういう理由があるのかを知ろうとしない、ということがもしかしたら短絡的な差別心をうんでいるのかもしれません。
今回最も印象に残った話はワトソン氏が知人カンさんのいるバングラディッシュに訪れた話でした。
バングラディッシュは毎年のように水害に悩まされ、世界で最も貧しい国の一つであります。
ワトソンさんが訪れたときは、政治等も比較的安定した時期だったのですが、それでも滞在5日間で5人の政治家が暗殺されたそうです。
バングラディッシュのあまりにもひどい生活水準に大変驚かれたということでした。
カンさん一家はそこまでひどい生活ではなかったそうですが、日本から見ると決していい暮らしとは言えない状態でした。
カンさんの2人の子どもたちが学校から帰ってくると、「お疲れさま」「会いたかったよ」「ありがとう」といって親子で抱き合っていたそうです。
夜は家族で歌って踊って笑って過ごします。
この家族には、「愛してる」「尊敬してる」「感謝している」姿があり、おかげさまの心で生活しているということが伝わってきたそうです。
ワトソン氏は最後に、私たちは今一度人間としての原点を見つめ直し、相手を受け入れ感謝すること、そして次世代を担う子どもたちに「人の為に何をすべきで、何ができるのか」ということを伝えることが必要であるということをおっしゃいました。
「解放研修」会場の様子 |
ワトソン氏のお話は終始とてもユーモラスで研修はあっという間の2時間でした。
しかし、ワトソン氏の人柄の素晴らしさと姿勢に共感し、外国人であるが故にいい面も悪い面も含め日本人のあり方をご指摘いただいたということは、非常に貴重なご縁をいただくことができた研修でした。
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