東北地方太平洋沖地震で犠牲に遭われた方々には衷心より哀悼の意を表し、被害に遭われた方々には心からお見舞い申し上げます。

東北地方太平洋沖地震で犠牲に遭われた方々には衷心より哀悼の意を表し、被害に遭われた方々には心からお見舞
い申し上げます。

2011年1月4日火曜日

念仏もうさるべし

年が明け、2011年を迎えました。
今年はいよいよ宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌の年であります。
やや盛り上がりに欠けている感は否めませんが、とにかく門徒一人ひとりが念仏興隆、法義相続の大切な勝縁にしなければなりません。

さて、正月といえば「初詣」と称し、民族大移動の如く各有名社寺に人々が参詣の足を運びます。
まだ今年の集計は出ていませんが、毎年の初詣参詣者数は明治神宮(東京)、成田山新勝寺(千葉)、川崎大師(神奈川)、伏見稲荷大社(京都)、鶴岡八幡宮(神奈川)というところが上位を占めています。
その数は驚くことに三が日で200万人〜300万人超であります。
九州では太宰府天満宮(福岡)がトップでやはり200万人以上の参拝があるようです。
大分県では宇佐神宮(宇佐市)で約40万人、春日神社(大分市)が約30万人と参拝者が多いところです。
こういった有名所ではなくても、近所の神社などにお参りする人もいるわけで、その参詣者数のトータルはおそらく日本人の人口を超えるはずであります。(一人で数カ所参拝する人がいるからです)
さて当寺院ですが、いうまでもありませんが宗教施設というか参拝施設といえる場所であります。
「さぞ、お正月の初詣の参拝者が多く忙しいだろう」と思われる方もおられるかもしれませんが、なんとご門徒の方が10数名ほどがご挨拶に来られるだけです。
確かに昔はもっと多くの方がご挨拶に来られていましたが、当寺院も門徒戸数が数百件ある中でのこの数字は情けないというかお恥ずかしいというか、なんとも言えぬ思いです。
「まあ、お正月をゆっくり過ごせていいとするか」と自分を慰めている次第です。
じゃあ、当寺院がお預かりしているご門徒さんたちは一体どこへ初詣に行ったんでしょうか?
家でじっとしているならば、まだありがたいんですが、おそらくどこか別の宗教施設にお参りに行ったんでしょうねえ。
そういえば、私たちの本山である京都の東本願寺はどうなんでしょうか?
お正月に参拝したことがないんでどのくらいの参詣者数があるかは不明ですが、そんなに多くはないような気がします。

日本人がなぜ初詣をするのか?
どういうところに初詣に行くのか?
一年のはじめにどこかにお参りに行くというのは、その一年を無事に、幸せに、いい年になるように願うところにその理由があるとみられます。
人間は自分の都合のいいようになって、何事も思い通りになることを期待し、それが叶えば幸せになれると思っています。
だからその願い、思いを叶えてくれるところにお参りに行くんです。
受け入れる側(宗教施設)も「来た人は幸せにしますよ」っていう姿勢で受け入れてるんです。
つまり、初詣の背景のほとんどはこういう構造から成り立っています。
そういう意味では、真宗寺院において正月に参拝者が多くなるはずもありません。

『蓮如上人御一代記聞書』という書物に次のようなことが記されています。
今から500年以上前の明応2年(1492年)の正月に、本願寺八代目留守職の蓮如上人のところへ、上人を師と仰いでいた勧修寺村の道徳という方が新年のご挨拶に来ました。
そこで蓮如上人は「道徳よいくつになるぞ。道徳、念仏もうさるべし」とおっしゃいました。
その時、蓮如上人が79歳、道徳が74歳だったそうです。
このエピソードには大変深い意味が込められています。
「念仏もうす」ということはどういうことで、なぜ74歳にもなった道徳にあらためて念仏をすすめたのでしょうか?
「念仏をもうす」ということは、何事も自分の都合のいいように思い通りになることを願ったり、都合の悪いことは自分から遠ざかって欲しいという厄除け的なことをするのではなく、そいうった思いこそが自分自身を見失い自分自身を惑わしめていることにほかならないということを仏教の教によって気づかせていただくということです。
念仏をもうすことによって、仏教という私にとって本当に拠り所となる立脚地を確認することこそが大切な事です。
長年教えを聞いてきたであろう74歳の道徳であっても、ついそのことを忘れて我が身のあり方を見失いがちになるものです。
一年のはじめに阿弥陀様の前に身を置き、人生を空しくしないように念仏のもと生きることをあらためて確かめるのが真宗門徒の嗜みであります。

お正月の民族大移動に、一年のスタートから迷いが迷いを深めながらつまずいていることに気づかず、笑顔いっぱいでいる滑稽さを感じつつ、この一年も世の中は不安だらけになることの絶望感につつまれています。

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